退職後の仕事探し やさしい始め方・進め方
退職という人生の大きな節目を迎え、新しい生活が始まります。自由な時間が増える一方で、「これからどう過ごそう」「生活費は大丈夫だろうか」といった漠然とした不安や、社会とのつながりが薄れることへの寂しさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。
こうした中で、「退職後も何らかの形で働きたい」と考える方も増えています。これは、金銭的な理由だけではなく、健康維持のため、社会とのつながりを持つため、そして何より、新しい生きがいややりがいを見つけるためでもあります。
この記事では、退職後の仕事探しを難しく考えすぎず、ご自身のペースで「やさしく」始めるためのヒントをお伝えします。
退職後に「働く」ことを考える多様な理由
退職後も働くことを考える理由は人それぞれです。主な理由としては、次のようなことが挙げられます。
- 生活費の補填: 年金だけでは少し心もとない、趣味や旅行などに使えるお金を増やしたいといった経済的な理由です。少しでも収入があると、日々の生活に安心感が生まれます。
- 健康維持・体力維持: 体を動かしたり、頭を使ったりすることで、心身の健康を保つことができます。規則正しい生活リズムが生まれることも、健康にとって良い影響を与えます。
- 社会とのつながり: 職場というコミュニティに属することで、新しい人間関係が生まれたり、社会の一員として貢献できているという感覚を得られたりします。
- 生きがい・やりがい: 新しい知識やスキルを身につけたり、誰かの役に立ったりすることを通して、日々の生活に充実感や目標を持つことができます。
- 時間を持て余さないため: 増えた時間を有効に使いたい、退屈せずに過ごしたい、という理由で働くことを選ぶ方もいらっしゃいます。
働くことは、単にお金を稼ぐこと以上の、様々な意味を持っていると言えます。
「働く」の多様な形を知る
「働く」と聞くと、会社に毎日通勤してフルタイムで働く、というイメージがあるかもしれません。しかし、退職後の「働く」の形は非常に多様です。ご自身の体力や時間に合わせ、無理なく続けられる形を見つけることが大切です。
- パート・アルバイト: 時間や日数を自分で選べる場合が多く、比較的気軽に始められます。様々な業種や職種があります。
- シルバー人材センター: 原則として60歳以上の方が会員となり、地域から請け負った仕事を会員に提供する組織です。公園の清掃、施設の受付、家事援助など、短時間・短期間の仕事が多い傾向があります。地域の貢献にもつながります。
- 契約社員・嘱託社員: これまで培ってきた経験やスキルを活かして、専門的な仕事に就く形です。フルタイムに近い働き方になることもあります。
- ボランティア活動: 直接的な収入はありませんが、社会貢献を通して大きなやりがいや人とのつながりを得られます。働くことと同じように、時間を有効に使い、活動を通して健康を維持することにもつながります。
- 趣味や特技を活かした活動: 自分の好きなことや得意なことを教えたり、作品を作って販売したりと、小規模ながらも収入を得る活動も考えられます。
このように、様々な選択肢がありますので、「自分にはどんな働き方が合っているだろうか」と気軽に考えてみることから始めてみましょう。
仕事探しの「やさしい」始め方
いざ仕事を探そうと思っても、「何から始めれば良いのか分からない」「自分にできる仕事があるか不安」と感じるかもしれません。難しく考える必要はありません。まずは次のステップで、ゆっくりと進めていきましょう。
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「なぜ働きたいか」を漠然と考えてみる:
- 収入のためでしょうか。それとも健康のため、人とのつながりのためでしょうか。
- どんな時にやりがいを感じるでしょうか。どんなことが好きでしょうか。
- 週に何日くらい、一日何時間くらい働きたいでしょうか。
- 通勤時間はどのくらいが良いでしょうか。
- こうした点を漠然と、紙に書き出してみたり、信頼できる人に話してみたりするだけでも、考えが整理されます。
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情報収集の場所を知る:
- ハローワーク(公共職業安定所): 国が運営する就職支援機関です。無料で様々な業種の求人情報を提供しており、職員の方に相談することもできます。シニア向けの求人も扱っています。
- シルバー人材センター: 先ほども触れましたが、地域密着型の仕事を探す際に有効です。まずは地域のシルバー人材センターに問い合わせてみるのも良いでしょう。
- 求人情報サイト・アプリ: インターネット上で多くの求人情報を検索できます。「シニア歓迎」「WワークOK」などの条件で探すことも可能です。操作に不安がある場合は、ご家族や詳しい方に手伝ってもらうと良いでしょう。
- 地域の広報誌や掲示板: 地元のお店や企業の求人が載っていることがあります。
- 知人からの紹介: 人づてに仕事が見つかることもあります。
いきなりすべての情報を見る必要はありません。まずは「こんな場所があるんだな」と知ることから始め、興味を持ったところから情報を見ていくのが良いでしょう。
具体的な「進め方」のヒント
情報収集を始めたら、次は応募や面接といったステップに進みます。ここでも、完璧を目指すのではなく、ご自身のペースで進めることが大切です。
- 相談してみる: ハローワークやシルバー人材センターの職員に、「どんな仕事を探しているか」「どんな経験があるか」などを話して相談してみましょう。一人で悩むよりも、専門家のアドバイスを聞く方が安心して進められます。
- 興味のある求人を見てみる: 気になる求人があれば、仕事内容や条件をよく読んでみましょう。もし少しでも興味が湧いたら、「とりあえず話を聞いてみようかな」くらいの気持ちで問い合わせてみるのも良いでしょう。
- 履歴書や面接について: 履歴書の作成や面接は、久しぶりだと戸惑うかもしれません。ハローワークなどでは、履歴書の書き方講座や面接の練習などを行っている場合もあります。難しく考えすぎず、これまでの経験や働く意欲を正直に伝えることが大切です。
まずは「応募する」という具体的な行動に移るよりも、気になる情報に触れてみたり、相談してみたりする「一歩」から始めてみるのがおすすめです。
働く上で大切にしたいこと
無事に新しい働き方が見つかったら、長く続けるためにいくつか心に留めておきたいことがあります。
- 無理をしない: 体力や健康状態に合わせて、無理のない働き方を選ぶことが最も重要です。疲れたら休む、難しいと感じたら相談するなど、ご自身の体を大切にしましょう。
- 楽しむ気持ちを持つ: 新しい環境に慣れるまでは大変なこともあるかもしれませんが、働くことを楽しむ気持ちを持つことが大切です。新しい人間関係や、できたことへの喜びを大切にしましょう。
- 感謝の気持ちを持つ: 働く機会を与えてくれたこと、周りの人に助けてもらったことへの感謝の気持ちを持つことで、より良い関係を築くことができます。
まとめ
退職後の仕事探しは、新しい生活の一部として、ご自身の可能性を広げる素晴らしい機会となり得ます。収入だけでなく、健康、社会とのつながり、そして新しい生きがいを見つけることにもつながります。
もし、仕事探しに不安を感じているとしても、焦る必要はありません。まずは「なぜ働きたいか」を漠然と考えてみたり、ハローワークやシルバー人材センターといった情報源があることを知ることから始めてみてください。相談したり、気になる求人を少し見てみたりする「やさしい一歩」を踏み出すことが、新しい扉を開くことにつながります。
この記事が、あなたの退職後の「働く」を見つけるための一助となれば幸いです。