退職後の住まい これからを考えるやさしい一歩
退職という人生の大きな節目を迎え、新しい生活への期待とともに、漠然とした不安を感じていらっしゃる方も少なくないと思います。特に、今後の「住まい」について、「このままで良いのだろうか?」「何か考えておかないといけないのでは?」と感じつつも、どこから手を付けて良いか分からない、というお声も聞かれます。
この記事では、退職後の住まいについて、複雑な情報を抜きにして、まずは「考えるきっかけ」や「選択肢を知る」ためのやさしい一歩をご案内します。すぐに結論を出す必要はありません。ご自身のペースで、これからの暮らしに合った住まいをゆっくりと考えていくためのヒントとしてお読みいただければ幸いです。
なぜ退職後に住まいを考える必要があるのでしょうか
現役時代には当たり前だった暮らしが、退職によって少しずつ変化していきます。それに伴い、住まいについても自然と考える機会が増えてくるものです。主な理由として、いくつか例を挙げてみましょう。
- ライフスタイルの変化:
- 家にいる時間が増えることで、今の住まいの良いところ、不便なところがよりはっきり見えてきます。
- 趣味や社会活動など、外出の目的や頻度が変わり、住まいの立地に対する考え方が変わることもあります。
- 体の変化:
- 年齢とともに、階段の上り下りが大変になったり、ちょっとした段差につまずきやすくなったりすることがあります。
- 将来的に手すりが必要になるかもしれない、といったバリアフリーへの配慮も視野に入ってきます。
- 経済的な変化:
- 現役時代に比べて収入が減る場合、住宅ローンの有無にかかわらず、固定資産税や維持費、将来の修繕費などが家計にどう影響するかを考える必要があります。
これらの変化は、すべての方がすぐに直面するわけではありませんが、前もって少し頭の片隅に置いておくだけで、いざというときに慌てずに済みます。
まずは何から考え始めれば良いのでしょうか
「住まいを考える」と言っても、いきなり具体的な行動に移る必要はありません。まずはご自身の現状を知り、これからの暮らしに思いを馳せることから始めてみましょう。
- 今の住まいの「良いところ」「不便なところ」を書き出してみる:
- リビングが広くて快適、日当たりが良い、など気に入っている点は何でしょうか。
- 一方で、冬は寒い、段差が多い、駅から遠い、掃除が大変、といった不便な点は何でしょうか。
- 書き出すことで、今の住まいの長所と短所が整理できます。
- 今後、どのように暮らしたいか、漠然としたイメージを持つ:
- 庭の手入れは続けたいですか?それとも手がかからない方が良いですか?
- 一人で静かに過ごしたいですか?それとも家族や友人が集まる機会を増やしたいですか?
- 車は手放しますか?公共交通機関の利用が増えますか?
- 完璧な答えがなくても大丈夫です。「こんな風になったらいいな」というくらいの気持ちで、自由に想像してみてください。
- 可能であれば、ご家族と話し合ってみる:
- 一緒に暮らすご家族がいる場合は、お互いの考えや希望を話し合ってみる時間を持つことも大切です。
どんな選択肢があるか知っておきましょう
住まいについて考え始めたら、次に「どんな選択肢があるのだろう?」と少しずつ目を向けてみましょう。代表的な選択肢をいくつかご紹介します。
- 今の家で暮らし続ける:
- 住み慣れた場所で、人間関係や生活環境を変えずに暮らせるのが最大のメリットです。
- 必要に応じて、リフォーム(家の改修)をして、より快適にしたり、バリアフリー化(段差をなくしたり手すりをつけたりして、安全に暮らしやすくすること)を検討することができます。
- より小さな家やマンションなどに住み替える:
- 今よりもコンパクトな住まいにすることで、掃除やメンテナンスの手間を減らせます。(これを「ダウンサイジング」と呼ぶこともあります。)
- 立地を変えることで、利便性の良い場所(駅に近い、病院やお店が近いなど)に移り住むことも可能です。
- 賃貸住宅に移る:
- 家の所有に伴う固定資産税や修繕費の心配がなくなります。
- ライフスタイルの変化に合わせて、比較的気軽に住まいを変えやすいというメリットがあります。
- ただし、家賃が継続的にかかることや、高齢になると借りづらくなるケースもある点は考慮が必要です。
これらの選択肢に、すぐに飛びつく必要はありません。まずは「こういう方法があるんだな」と知っておくだけで十分です。
無理なく、少しずつ情報集めをしてみましょう
「よし、もう少し詳しく知りたいな」と思ったら、専門家や窓口に相談に行く前に、ご自身で手軽にできる情報収集から始めてみるのも良いでしょう。
- インターネットで情報を探す:
- 「退職後 住まい」「シニア 住み替え」といった言葉で検索してみると、色々な情報や体験談が見つかります。ただし、すべての情報が正しいとは限らないので、参考程度に見てみましょう。
- 自治体のウェブサイトを見て、高齢者向けの住まいに関する情報や相談窓口がないか探してみるのも良い方法です。
- 関連書籍を読んでみる:
- 書店には、退職後の暮らしや住まいに関する入門書がいくつかあります。図やイラストが多いものを選ぶと、分かりやすいかもしれません。
情報集めは、あくまでご自身のペースで、楽しみながら行うのが一番です。義務のように感じず、「知的好奇心を満たす」くらいの気持ちで取り組んでみてください。
まとめにかえて
退職後の住まいについて考えることは、これからの人生をより豊かに、そして安心して暮らすための大切なステップです。しかし、焦る必要は全くありません。
まずは、今の住まいについて感じていること、そしてこれからどんな暮らしをしたいのか、といったご自身の気持ちにゆっくりと向き合ってみましょう。そして、「こんな選択肢もあるんだな」と知っておくだけでも、漠然とした不安が少し和らぐかもしれません。
この記事が、あなたの「これから」を考えるための、やさしい最初の一歩となることを願っています。